お盆が過ぎて、高校野球が終わると夏も終わりなんだな と感じる。
まだまだ毎日ひどく暑いけど、朝、出勤するときの空気がふと清々しく感じて空を見上げたら、何だか秋の空だった。
まだまだ毎日ひどく暑いけど、朝、出勤するときの空気がふと清々しく感じて空を見上げたら、何だか秋の空だった。
今年も甲子園へ高校野球の観戦に行ったよ。
関西に住んでいて一番良かったことは甲子園が近いこと、かもしれない。
人によって、高校野球への思いは様々なんだろうけど女子マネージャーだったわたしは特にこの地への思い入れが強い、と思う。
一球に込められた気持ち
一瞬にかけてきた時間
そういったものをひしひしと感じられる場所。
あの夏の日々をふと思い出し、また明日も頑張ろうと思える場所・【月より遠い】甲子園。
今日は、最後の日の話。
決して強豪校ではなかったけど、真剣に野球に打ち込むそんな高校の一つだった我が校は、その年も甲子園への登竜門・全道大会を目指していた。
組み合わせはまずまずで地区予選の決勝が山場。
チームメイトも、応援してくれるクラスメイトも誰もが「その試合は勝てる」そう思っていただろう。
野球の神様は、意地悪だ。
気づかぬうちにズルズルとまるで沼の深みにはまるみたいに、気がついたらわたしたちは試合にのまれていた。
エースの調子が悪かった。投打がかみ合わなかった。ここぞ、の場面で当たり前のプレイが出来なかった。
そうして迎えた、9回裏2アウト。
「まさか、そんなはずがない」そう思いながら、震えてスコアがつけられない。だって、ここで、終わるわけにはいかないんだよ。
涙で曇った視界に白球はもう映らない。
隣で監督が叱咤する。「泣くな。まだ終わっていない」わたしに言われているのか、他の部員に言われているのか。「最後の、最後。
ボールがミットに収まるまでその瞬間まで見届けろ。」
ラストバッターになった2年生のバットが空を斬る。ボールは、相手キャッチャーのミットにずしん、と空気を震わせるようにして収まっていった。
結局3アウトのスコアはつけられなかった。
それまでの記憶は鮮明なのに、その後はぼんやりとしか覚えていない。ロッカールームで泣きながら、後片付けをした。試合後のミーティングもこれが最後。
ぼとぼとと落ちる涙を拭うこともせずに取材を、うけた。
キャプテンから「今まで本当にありがとう」と、泥だらけの大きな手でポンポン、と頭を叩かれた。キャプテンの眼も真っ赤だった。
どうやって家に着いたのか、家族は何も言わなかった。晩ご飯も食べずに、部屋で一人、また泣いた。
悔しくて泣くことができるくらい、それくらい強く思える、それくらい打ちこめることがあるということは幸せだ。今、心からそう思う。
わたしたちの願いは届かず、ただの一度も甲子園の土を踏むことは叶わなかったけれど、あの日々があったことは今わたしの人生で大きな意味を持っている。あれほど頑張れたことが、今のわたしの力となっている。
翌日の地方紙に、小さな小さな記事が載った。【女子マネージャー お疲れさま】
記事はあの日のスコアに挟まれて、今も実家の部屋の片隅に眠っている。
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