2012/04/03

希望の国のエクソダス♡

BRUTUSで紹介されていて、読みたいな〜、と何となく思っていた、村上龍さんの【希望の国のエクソドス】。


文庫の割にはボリュームがあって、なおかつ内容が、全く無知の分野【経済】に関わるところが多いということもあって、読むのにものすごーく時間がかかった。
でも、読んでおいて良かった!

中学生が、既存の日本の枠組みから飛び出して、新しい枠組みを作っていく過程を【既存の日本の大人】の視点で描く小説。はじまりは今から10年とちょっと前の2001年。書かれたのは、そのもう少し前の2000年なのだけど、その後の日本に現実に起こったこととの酷似性がものすごくて、すごいインパクトだった。

わたしは経済なんて全くわからないから、公的資金がどうの、通貨がどうの、と言われてもイマイチぴんと来ない。でも冒頭に出てくる【アフガニスタン】【パシュトゥン】などの異国の地名や民族が2001年以降、頻繁にニュースに登場したことは何となくわかるし、日本経済が波はあれど、ずっと停滞していて、その明確な解決策を【日本の大人】がずっと提示できていないことも、何となくわかる。

そういった意味で、2000年に村上龍さんが描いた小説は、未来予想図であって、そしてかなりの近似性をもって(残念ながら)実現してしまっているんじゃないか、と思った。

唯一、違うのは中学生が行動力を発揮して、既存の枠組みをから飛び出すということがないだけ。
この中学生が、村上龍さんの描いた小説の中で【ヒーロー】という位置づけなるとは決して思わないけれど、停滞した日本という国に風穴をあける存在だったことは否めない。そして、そういった存在は2012年になった今も、現れていない。

【ヒーロー】はいつ現れるんだろう?

そう思った時に、ふと気がついてしまった。わたしたちは「いつか、誰かが」という期待感だけもって、ズルズルと、まるでガンが身体をじわりじわりと進行していくのをただ黙って見ているだけなんじゃないだろうか?
「自分が変えてやる」という手を挙げる勇気も、責任感もないままに、ただボンヤリと眺めているだけ。

発表当時、2000年には高校生で、その当時に読んだならきっと、より歳の近い、中学生に共感して「こんな大人には絶対なりたくない!」って思っただろうわたしも、今や29歳。
【なりたくない】はずの大人の仲間入りを、とっくに果たしてしまっていることに気がついて、ただただ悲しかった。

何をどうしたらいいのか、全くわからないままに、危機感だけを煽られる存在。
この先、何か動かなきゃ…どうにかしなきゃ…と思いながら、きっと何も動けないんだろうな。
そんな硬直している自分をもどかしくイライラしながら、ページを閉じた。

読んでおいてよかったけれど、モヤモヤだけが残った1冊として、記憶に残るな。きっと。あーーー。


ふと本棚を見たら、2005年に既に買っていて、未読なだけだったことに気づいた。手元には同じ本が2冊。無駄買いをしたこと以上に、時間が経ちすぎて、そんな遅すぎた自分が悲しかった。

希望の国のエクソダス/村上龍

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