2012/12/14

桐島、部活やめるってよ

ずっと読みたかった朝井リョウさんの【桐島、部活やめるってよ】ようやく読むことができたんだ。どんな話かはよくわかっていなかったんだけど、大学生作家、映画化という話題もあって、気になる作品。


桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ

読んでみて、とにかく懐かしくて、高校時代の事すごく鮮明に思い出した。校舎とか、グラウンド、駐輪場、教室、部室、体育館。。。先生の間延びした声、バスケ部のバッシュがたてるキュッキュッという音、吹奏楽部の練習の音、ランニングの時の声出し。。。様々な景色や音がどんどんフラッシュバックする。

特にわたしは、高校時代のほとんどを部活をして過ごしたから、思い出すことの大半はやっぱりバックネット裏から見る風景やそこに届く音、夕暮れの柔らかくなった日差しで、グラウンドの土埃の匂いや、グローブやキャッチャーのガードの饐えた汗の匂いだったり。部員の皆のジャージからほんのりかおる、柔軟剤の香り。それがわたしの【高校】というイメージ。


あの頃漠然と感じていた【イケてる】【イケてない】の明確な線引きをこんなにもリアルに描けるのは、この作品を書いた時に朝井さんが19歳という年齢だったからじゃないかなぁ。ほんの少し前に体験したことを、階段の一つ上から見下ろして、一気に文字におこした、そんな印象。ごくごく近いんだけれど、でももうハッキリと違う、高校生と19歳。19歳だった当時、高校生という存在がつい最近だったのにとっても遠くのことのように感じてたよな、そういえば。

出てくる登場人物は【イケてる】組に分類される子もそうでない子も、立ち居振る舞い、目鼻立ち、心の襞まで、くっきりと手に取るようにイメージできる、それくらい【ほんとうの高校生】を見事に描ききってる。高校時代の友だちのあの子や、この子が、自然と目に浮かぶんだ。


あの頃のわたしには、学校が世界の全てだったなぁ。それ以外はまるっきり見えてなかった。学校の中でどう振る舞うか、どんな友だちと一緒にいて、どんな立ち位置にいるか、それだけが全てだったね。
今だからこそ、もう10年以上もたっているからこそ、「学校の中の世界が全てじゃないから大丈夫だよ」と、17歳という微妙な時期に生きにくそうにしている桐島や涼也や実果に語りかけるようにして読めるけれど、あの頃の、不安定だった高校生のわたしにも語りかけたりするけれど、あの頃はそんな風に考えることって絶対に出来なかったな。


高校時代をふと思い出して、戻りたいような・・・いや、やっぱりやめておきたいような、、、17歳のあの頃はわたしにほんと、ほろ苦くて特別な時間だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿